六神合体ゴッドマーズ・父の記憶
1
西暦1999年、地球はギシン星と交戦状態にあった。コスモ・クラッシャー3号機に乗った明神タケルは、ギシン軍の攻撃を掻い潜って、空中に浮いているギシン軍の機動要塞に近づいた。その時タケルはブリッジの窓にいるマーグを見つけた。
「兄さん!」
タケルは叫んだ。
「兄だと? 貴様のような弟を持った覚えは無い!」
しかしマーグはタケルの言葉を否定した。そしてシャッターが降りて窓を覆うと、機動要塞からコスモ・クラッシャー3号機に向けて攻撃を開始した。タケルはそれらの撃を避けたが、機動要塞は移動を開始して遠ざかると、一気に飛び去った。
ギシン軍の機動要塞は宇宙空間に来ていた。既に戦線を離脱していたので、再びシャッターが開いていた。マーグの傍らにはロゼもいた。
「俺によく似た顔の男が俺を兄と言った。ギシン星人ならなぜ我々に反抗するのだ」
マーグは独り言を言った。
「隊長! 理由はどうあれ、彼がズール皇帝への反逆者である事には変わりありません!」
傍に立っていたロゼが言った。
マーグはロゼに訊いた。
「君には兄弟はいるのか?」
ロゼが答えた。
「はい。妹が一人」
「そうか。君に似て奇麗な人なんだろう」
マーグが言った。それからまたロゼに言った。
「暫く一人にしてくれ」
ロゼが出て行くと、マーグは椅子に座って、眠りに落ちた。
2
二十年程前だったであろうか、タケルとマーグの実父のイデアは、アイーダを妻に娶ると、広大な敷地の中にある大きな屋敷を新居に定めた。屋敷の地下には、個人所有の工場もあった。イデアはギシン星の科学長官に就任して働き、休日には、趣味でロボットを作った。
イデアは、マジン・タイタンを作った。ギシン星の言葉で、マジンとは、自立して動くロボットの事であった。
イデアは人間の骨盤の形をよく知らなかったので、腰椎の下端部から左右に一本の棒が伸びて、その棒の先端が股関節になっていて、脚に繋がってるような形に作った。
そして人間の鎖骨や肩甲骨がどのように背骨や肋骨に繋がっているかもよく知らなかったので、腰椎の上端から前後に棒が伸びて、前方の棒の先端の上に胸骨が乗り、後方の棒の先端の上に胸椎が乗り、胸骨からは前烏口骨という四角い板が左右に生えて、胸椎からは上肩甲骨という四角い板が左右に生えてて、前烏口骨と上肩甲骨の両端は、肩甲骨という四角い板で繋がっていて、肩甲骨から腕が生えていて、胸椎の上端から頸椎が伸びて、頭部に繋がっていた。
それから、タイタンの設計図を流用してゴッド・ウラヌスを作った。ゴッドとは、ギシン星の言葉で、人が乗って操縦するロボットという意味であった。
解説
放送当時に売られていた玩具では、ガイヤーはゴッドガイヤーという名前になってて、五神ロボは、マジンスフィンクス、マジンウラヌス、マジンタイタン、マジンシン、マジンラーという名前になってました。
3
イデアは人間の骨盤が、上下から見たら輪のような形になっている事、そしてカエルの上肩甲骨が胸椎の両脇から左右に伸びて、前方に湾曲しながら肩甲骨に繋がり、更に内側に湾曲しながら伸びて前烏口骨に繋がり、そして胸骨に繋がり、輪のような形になってる事を知って、身長が25メートルあるスフィンクスを作った。その際、強度に不安があったので、胸骨の下に、ワニのような腹肋を取り付けて、下端を恥骨結合辺りに繋いだ。そして上腕部の上端が第二肘関節であり、超上腕部が肩に繋がっていた。
肩帯はカエルのように、背骨の両脇から左右に伸びて、前方に曲がって伸びて、更に内側に曲がって伸びて胸骨に繋がっていて輪のような形になっていて、これまたカエルのように、胸骨が上に伸びて上胸骨を形成していた。そして鎖骨はブラジャーの肩紐ような形であり、前烏口骨の上側から、上肩甲骨の上側に繋がっていた。
スフィンクスの肩ブロックの中には、超上腕骨(suprahumerus)という、如何なる生物にも無い骨があって、体側は肩甲骨に繋がっていて、腕側は上腕部に繋がっていた。肩ブロックは胴体に少しめり込んでいて、胴体の表面辺りで超上腕骨が切れてて、切れ目から直角の方向に板が生えてて、二枚の板は回転軸で繋がっていて、肩をグルグル回す事が出来た。
腰側は、背中側の、横に長い長方形の板が仙骨で、左右側面の板が腸骨で、腹側の板が恥骨で、腸骨の下側から脚が生えていた。
これに気を良くしたイデアは、スフィンクスの設計図を流用して、手足が大きくて身長が50メートル程もあるロボットを作った。しかし、イデアは完成せると我に返って、何でこんな変な物を作ったのかと後悔した。
〈先端巨大症のスフィンクスか・・・〉
イデアは心の中で毒づくと、そのロボットには名前も付けずに、倉庫の一番奥深くに押し込んだ。
解説
今回作った、名も無いロボットは、ビデオ版のゴッドマーズと同じデザインです
4
傷心のイデアは、人間の骨格について徹底的に学ぶと、ゴッド・ウラエウスを作った。それは胸骨が環のような形をしている以外は人間と同じ骨格を持ち、人間と同じように動く事が出来た。頸椎骨は、片脇に四角柱が付着した短い円錐形の形の椎体が、人間の椎間板に当たる球体と交互に重なった形であり、普段は四角柱同士が干渉しないように、交互に逆方向に回転していた。搭乗時は、頸椎骨に付着した四角柱が向きを揃えて、上端が後頭部の裏側のレールに繋がり、下端が胸椎の裏側のレールに繋がって、レールを形成して、普段は頭蓋骨の中にあるコクピット・ブロックが、そのレールを伝って、環の形の胸骨の高さまで降りて来た。ウラエウスを完成させたイデアは、満足した。
解説
この作品に出るウラエウスは、ビデオ版のガイヤーと同じデザインです。
5
次にイデアは、シンを作った。人間の骨は複雑なので、可能な限り単純化した。頸椎と胸椎の接合部からは、左右に棒が伸びて肩帯を形成して、両腕が繋がり、胸椎の前方には肋骨と胸骨があって、後方には背側肋骨と背側胸骨があって、腰椎の下端部からは、左右に棒が伸びて腰帯となり、両足に繋がるなど、無駄な複雑さを排して、単純な構造に作られていた。イデアはウラエウスと同様に、シンも気に入った。
その後、青い色のカメラアイが発明されて話題になったので、イデアはシンの設計図を流用して、青いカメラアイを使って、ラーを作った。
これらの他に、イデアは顧客の依頼によって、オルトス、ヘリオス、頭部が分離して飛び、後にグルダーの原型となったオイディプス、そしてカオスなどを作って売っていた。
ウラエウスの評判が、甚だ良かったので、ギシン星の皇帝ズールはイデアに、ウラエウスをもう一体作って寄こすように言った。
6
17年前の、1982年の事であった。ギシン星の科学長官のイデアは、宇宙の星の平和利用のために、ウラエウス2号機改め、ガイヤーを完成させた。それはエネルギーが何十年も無くなる事が無い反陽子エネルギーで動いた。
その年の1982年6月16日、イデアの妻アイーダに双子が生まれた。兄はマーグ、弟はマーズであった。見舞いに駆け付けたイデアは思わず「二人とも将来、私のロボットを乗り回すのか。それとも私と共に三人で宇宙一のロボットを作るのか」と言った。
イデアは赤ちゃんに必要な物を買いに行った。玩具屋で、超合金のロボットを見て、今時の玩具は昔とは比べ物にならない程に進歩していたので、イデアは驚いた。店員の人に、子供に買うとしたらどんなのが良いかを聞いて、「こんなに重くて固い物は赤ちゃんには早いですね。尖ってる部分もありますし。口に入らない大きさの縫い包みが無難でしょう」と言われた。
7
それから二週間した或る日の事であった。
イデアはアイーダと共に、ギシン星の支配者であるズール皇帝に披露するためにマーグとマーズを連れて王宮へ出向いた。それはギシン星の幹部に義務づけられた習慣だったのである。
ズール皇帝は居室から謁見の間に現れると、両親に抱かれた双子を見つめて暫く沈黙していた。そのメカニックな鉄仮面の目から異様な光が点滅し始めている。イデアとアイーダは緊張して言葉を待っていた。
「その二人の子供には、ギシン星の運命がかかっている」
ズールは謎めいて言った。
「背くか、それとも力になるか――――」
「皇帝。それはどういう事でしょうか」
「科学長官のお前にも判らぬというのか?――――お前の子供はそれだけの能力を持ち合わせているという事だ」
「――――」
「特にアイーダの抱いている子供はわしの期待に副える子だ」
ズールはマーズを見つめているようであった。
王宮を出たイデアとアイーダは、マーグとマーズを見てズールが何を考えていたのか全く見当がつかなかった。そんな事よりも、むしろ皇帝の御機嫌を損わなかっただけでほっと胸を撫で下ろしていたのである。
8
ところが間も無く、イデアにとって想像もしてなかった事件が起こってしまったのである。
ズールから招集がかかり、軍事力を握っている総司令官のワールとギシン星の治安を受け持っているサグール、そしてイデアが会議室に集まっていた。
「見るが良い。銀河の辺境に存在する地球という星の発展ぶりだ」
スクリーンには地球の科学施設が次々と映し出されていた。
「偵察員が集めた資料を見れば明らかな通り、地球は宇宙への進出を考えている事が間違い無くなった。最早これを黙って見逃している訳にはいかん」 「皇帝。我々も宇宙の新しい発見と開発を考えております。地球という星がそれを考えたとしてもおかしな事ではありませんか?」
「イデア――――」
「お互いに宇宙をより良く利用する事はプラスになる事かと思いますが――――」
するとズールはその鉄仮面の目の光を怒りを露わにすると、
「黙れ!」
と、遮った。
「地球が宇宙へ進出して我々の存在に気付けば、必ず抹殺に来るであろう。ギシン星の将来のためにも、それを見逃している訳にはいかぬ」
ワールもサグールもズールの見解に同感であった。
「わしの推測では、地球が最も危険な力を持つと思われるのは1999年だ。その時ギシン星が地球の力に怯える事無く、宇宙に君臨しているためには、一刻も早く手を打っておかなくてはいけない」
ワールもサグールも頷いている。
「イデア」
ズールが体を乗り出して来た。
「お前には急いでやって貰わなくてはならない事が出来た。ガイヤーの反陽子エネルギーを爆弾に変えるのだ」
「え!?」
イデアはズールを見つめて絶句してしまった。 「直ちに作業を完了させ、搭乗者を地球へ送り込む」
「――――!?」
「1999年、地球が一歩でも宇宙に進出して来る動きを見せれば、その時わしの命令に従ってガイヤーを爆発させて地球を抹殺してしまうのだ」
「しかし皇帝、もしその時までにガイヤーが発見され、搭乗者が殺される事になったら何にもなりません」
ワールが大発見したように言った。 「イデア、ガイヤーの特徴を説明してやるが良い」
ズールの指示がズシーンと胸に響いた。
「ガイヤーはその搭乗者の脳波に感応して動く事になっているのです。従って、もしその搭乗者が死ぬような事があれば――――、脳波が停止するような事があればガイヤーは――――!」
そこまで言ってイデアはふと言葉を飲み込んでしまった。ズールの意図がはっきりしたのである。搭乗者の死と共に反陽子爆弾を爆発させるようにせよという事だったのだ。
「イデア、判ったな」
「し、しかし――――」
「わしの命令だぞ!?」
もうイデアに反論の余地は無かった。
ギシン星ばかりでなく、銀河宇宙での平和的な利用を夢見ていたのに、ガイヤーは恐怖のロボット――――悪魔の使者に変貌しなければならなくなつたのだ。しかもそれを自分の手で行わなければならないとは――――。
「皇帝、これだけはお許し下さい。とても私には――――!」
「出来ぬと言うのか!?」
「イデア長官、誰の命令だと思っている!」
「命令に従わなければ処刑だぞ!」
ワールもサグールもいきり立ってイデアを攻め立てた。しかしイデアは固く唇を結んだまま承知しなかった。
「イデア。お前がどう抵抗したとしてもこれはもう変更が出来ない。科学局の総力を挙げて改造する!」
ズールは最終決断を下した。
9
会議が行われた後、イデアは帰宅して頭を抱えた。
〈ガイヤーが悪魔の使者になってしまう。絶対に地球を爆破するような事をしてはいけない!〉
イデアは決断した。
〈ゴッド・ガイヤーと共に、密かにマジンも送ろう〉
ゴッドとはギシン星の言葉で「人が乗って操縦するロボット」であり、マジンとは「自律して動くロボット」という意味であった。ガイヤーの搭乗者が地球人に殺されたら、地球に取り返しがつかない事が起こってしまうのだ。それを防がなくてはならないと思った。しかし地球人を傷つける訳にもいかない。イデアは考えた。
〈マジンの内の一体がガイヤーの鎧となり、他のマジン達が手足となって合体して、最強のゴッドとなるようにしよう。弱い者が必死に全力を尽くして戦って勝てば相手を不必要に傷つけてしまうが、強い者は相手を傷つけずに手加減をして勝てる。敵の数が多い場合は分離して、多数対多数で戦う事も出来る〉
イデアはガイヤーが、一体のマジンの中に収納されて、二体のマジンが両腕に変形して、二体のマジンが両足に変形して、合体して巨大なゴッドとなる様子を思い浮かべた。
〈しかし時間が足りない。手っ取り早く、既にあるロボット達を突貫工事で改造するしか無い〉
イデアはそう決めると、自宅に置いているロボット達の設計図を棚から引っ張り出した。それらはタイタン、ウラヌス、スフィンクス、名も無いゴッド、シン、ウラエウス、ラーの八体であった。イデアはスフィンクスに目を留めて、ガイヤーの鎧となるのに良いと思った。次にウラヌスとタイタンに目を留めた。それらの二体は、同じ設計図から作ったので、双子のように、身体各所の大きさが同じであり、腕となるのに良いと思った。そしてシンとラーに目を留めた。それらも同じ設計図から作ったので、身長や身体各所の大きさが同じであり、脛となるのに良いと思った。
10
イデアはシンとラーの骨の形が簡単なので、それらを最初に改造する事にした。ガイヤーの骨が、胸骨が輪の形をしている以外は人間の骨とほぼ同じ形であるのに対して、シンとラーの骨は、「土」の字の、上の横線の両端から腕が生えてて、下の横線の両端から脚が生えてて、二本の横線の間は、前にも後ろにも肋骨が付いていた。
胸側の肋骨と、背中側の背側肋骨の両方とも、一番下の肋骨を取り除いて、残りの肋骨は前後に長さを延長して、胸骨及び背側胸骨との繋ぎ目を一つずつ下にずらして、第一肋骨が、胸骨と第二肋骨との繋ぎ目に繋がるようにして、人型の時は下に垂れていて、脛に変形する時に水平に起き上がるようにした。
脇腹と同じ形の板の下端部に軸を設けて、胸側の外装と、背中側の外装の、両脇の下端部の裏面にレールを設けて、その板の下端部の軸を、レールにはめ込んだ。
両腕は、合体時に、肘関節が尺骨と橈骨の間を滑って行って、上腕骨が尺骨と橈骨の間に収まるようにして、土の上の横線――――肩帯は人型の時は水平に立ってて、合体時に上に倒れるようにした。
両脚は、合体時に膝関節が脛骨と腓骨の間を滑って行って、大腿骨が脛骨と腓骨の間に収まるようにして、土の下の横線――――腰帯は合体時に上に倒れるようにした。
こうしてシンとラーは、合体時に両腕と両脚が縮んで、胸パーツが前後に広がって、両脇に出来て広がった切れ目の下の表面が下端を軸にして起き上がって、両腕が両脇の蓋が開いた後の溝に収まり、蓋が閉じて腕をカバーし、頭部が中に引っ込んで、両脚をぴったりと閉じて、頭部と両肩と、胸部装甲の間に出来た隙間にスフィンクスの爪先が収まり、頭部と両肩と、背部装甲の間に出来た隙間にスフィンクスの踵が収まるようにした。
11
次にイデアはウラヌスとタイタンの設計図を見た。下半身の骨はシンとラーと同じだったので、合体時に腰帯が縮むようにして、大腿骨が脛骨と腓骨の間に収まるようにして、足が足首を軸にして下を向いて、踵が腓骨を滑り上がるようにした。そして大きな手を、親指と人差し指と、中指と薬指と小指に分割して、合体時に手首が脛骨を滑り降りて来て、分割された手が合体するようにした。
しかし上半身をどう改造したら良いかを思い付かなかったので、自由に形成したパーツに置き換えても良いのではないかと考えた。そして節足動物の外骨格を調べて参考にしようと思った時に、亀の肩甲骨が肋骨の内側に付いてる事を思い出して、改造の仕方を思い付いた。
腰椎の上端から左右にも棒を生やして、前後に生えている棒を伸縮するようにして、肩甲骨を、上肩甲骨と前烏口骨から切り離せるようにして、ウラヌスの右肩甲骨とタイタンの左肩甲骨は、左右の前烏口骨と胸骨の裏を水平に滑るようにして、ウラヌスの左肩甲骨とタイタンの右肩甲骨の裏面に、ゴッドマーズの肩に刺さる枘を付けて、腰椎上端から左右に伸びた棒の上を滑るようにして、頭部は胸椎の裏側を垂直に滑るようにして、合体時には前後の棒が伸びて胸が前後に厚くなり、頭部は後方にスライドして背中の板の裏を滑り降りて、ウラヌスの左腕とタイタンの右腕は前方にスライドして、上腕骨が尺骨と橈骨の間に収まって、肩甲骨が胸の板の裏を水平に滑って行って体内に収まり、ウラヌスの右腕とタイタンの左腕は中央に留まって、上腕骨が尺骨と橈骨の間に収まって、肩甲骨が、腰椎の上端から左右に伸びる棒に沿って滑って、腕が体内に引っ込むと同時に反対側から枘が出るようにした。
こうして、合体する時は胸パーツの幅が前後に広がって、頭部は背中側に行って、ウラヌスの左腕とタイタンの右腕は胸側に行って、ウラヌスの右腕とタイタンの左腕は真ん中に残って、両腕が縮んで引っ込んで、同時に枘が反対側から出るようにして、両脚が縮んでぴったりと閉じて、足が下を向いて引っ込んで分割された手が生えて合体するようにした。
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次にイデアはスフィンクスの設計図を見た。肩帯はカエルのように、上肩甲骨が胸椎の両脇から左右に生えて、先端から前方に肩甲骨が生えて、その先端から内側に前烏口骨が生えて胸骨に繋がって輪のような形になっていた。そしてこれまたカエルのように、胸骨が上に伸びて上胸骨を形成していた。スフィンクスの肩の中には、超上腕骨(suprahumerus)という、如何なる生物にも無い骨があって、体側は肩甲骨に繋がっていて、腕側は上腕部に繋がっていた。そして鎖骨はブラジャーの肩紐ような形であり、前烏口骨から上肩甲骨に繋がっていた。
骨盤は上下から見たら輪のような形であり、背中側は腰椎で胸の骨と繋がっていて、腹側は胸骨の下に、ワニのような腹肋骨が付いていて、恥骨に繋がっていた。胸の骨も骨盤も四角い枠のようであり、共に右前の角と左前の角が切れるようにして、合体時に、鎖骨の背中側の接合部が上に跳ね上がってから、再び元に戻るようにした。
イデアは頸椎の付け根にもう一つの頸椎を付けて、合体時に最初の頸椎が上に曲がって、背骨の表面を滑り降りるようにして、上胸骨が前方に折れ曲がって、二つ目の頸椎が起き上がって二つ目の頭部が直立してから上胸骨が元通り真っ直ぐになるようにした。
肩甲骨の肩関節窩を縦長にして、普段は超上腕骨が水平になってて、一番下に嵌っていて、合体する時は一番上に滑り上がりながら下向きに倒れて、脇腹のブロックが左右に広がって、超上腕骨の先端を押さえて固定して、上腕部と前腕部は胴体の中に収納されるようにした。その際、超上腕骨にも、スフィンクスの肩を回せるように、関節を追加した。
足首の関節が、合体する時に脛骨と腓骨の間を滑り上がって、連動して中足が凹んで爪先と踵の間に隙間が開いて、シンとラーの頭部と肩がその隙間に嵌って、スフィンクスの爪先がシンとラーの胸側の隙間に嵌って、踵が背中側の隙間に嵌るようにした。
ガイヤーの胴体を挟んで、足を固定する磔台のようなパーツが、背骨の裏側を上下に滑るようにした。
そして腿の前面の装甲が蓋になって外れるようにして、オート・ジョイントで、胴体前面の装甲の下に繋げた。
こうしてイデアは、後に五神ロボと呼ばれる事になる、五体のマジンを作った。
13
そんなある日、とんでもない決定がなされた。マーズがガイヤーの搭乗者に選ばれたのである。イデアは誕生披露のためにマーグとマーズを連れて王宮へ訪ねた日の事を思い出した。
「の二人の子供にはギシン星の運命がかかっている」
あの謎めいたズールの言葉の意味が今はっきりと理解出来た。
「皇帝! どうかそれだけは――――!」
「わしの息子として迎えると言ってもか――――!」
「は、はあ」
イデアは少し考えてから、皇帝に反論し始めた。
「皇帝、地球についてはまだ知らぬ事が多いのは確かです。しかし彼等が我々に敵対するかどうかは全く判らない事です。それを勝手にこちらで推測して危険な行為に出る事はどうかと思いますが――――!」
「黙れ、イデア!」
ズールの命令に忠実な実行者であるワールは、まるで自分が皇帝であるかまように怒り大声を上げた。しかしイデアは引き下がらなかった。反陽子エネルギーを爆弾に変えられた上に、その作動者としてマーズを使われる事はとても承服出来る事ではなかった。イデアはそれが絶対者ズールの命令である事を忘れて抗議した。しかしそんな事で心を動かされるズールではない。既にイデアが王宮に呼び出されている
間に、兵士が留守宅を襲いマーズを奪い去ってしまったのである。
14
それから間も無いある日、いよいよマーズを乗せたガイヤーが、ワープ・カタパルトで地球に送られる事になった。イデアとアイーダは、ハイヤーで宇宙空港へ向かった。ガイヤーはワープ・カタパルトの上で、岩のベッドのような物の上に横たわっていた。イデアは五神ロボを自由に操る事が出来るペンダントを、服のポケットに入れるとハイヤーから降りて、ガイヤーのそばに走って行った。
「ガイヤーのコクピットを点検したい」
「長官。登るのは危険でございます」
イデアが機体に昇ろうとして、技師が止めた。
「私が点検します」
ガイヤーの胸の上にいた技師が言って、パネルを開いて中を見て点検してから、再びパネルを閉じた。
「ご安心下さい。故障している箇所はありません」
「それは良かったですね」
二人の技師がイデアに言った。イデアは作り笑いをすると、礼を言ってアイーダの所に行って、もはや叶わぬ願いであったが、ペンダントをアイーダに渡した。
「もしマーズに会う事があったなら、これを渡して欲しい」
イデアはそう言うと、一人で走って行った。
その後、ガイヤーの上にいた技師達は全員下に降りて、近くのトレーラーに積まれていた人工の瓦礫が空中に浮き上がって、ガイヤーの上に積もると、古い神像のように見える物体を形作った。それは文明のある星に送られるので、古代の文明の遺跡に擬態していた。
15
イデアは一人で自宅に来ると、五神ロボが入っている石像を、地球に向けて発射した。そしてベッドで寝ているマーグを抱き上げると、地下の研究施設に連れて行き、記憶の伝達装置の器具を被らせると、自分も同じ器具を被って、赤ん坊のマーグに全ての記憶を伝えた。ギシン星ではゴッドは、バールが乗るバルバラや、ギーラが乗るギララのように、搭乗者に似た名前を付ける習慣があった。
〈マーズが乗るゴッドだからゴッドマーズ・・・? ちゃんとした名前を考えていなかった・・・〉
イデアはガイヤーと五神ロボが合体して完成する巨大なロボットの名前を考えてなかった事を心残りに思った。そして、名前を付けずに奥に仕舞った大型のロボットを思い出して、ウラエウスを胴体に収納して、手足が分離して四体のロボットになるように改造しようと思いついた。既にゴッドマーズを完成させている今、それは簡単な事に思えた。その改造案が頭の中で完成した時、全ての記憶をマーグに伝え終わった。イデアは自分とマーグの頭から器具を外して、マーグをベッドに寝かすと、部屋を出て行った。
16
十七年後の現在、椅子に座ったまま眠っていたマーグは目を覚ました。
〈あの男、マーズは俺の弟だった。 ・・・しかし弟であろうと、ズール皇帝に反逆する者は敵だ!〉
マーグは険しい表情になり、右手にぐっと力を入れて握りしめた。そして気を取り直すと窓の外の星空を見上げ、ギシン星の方向を見ると、ウラエウスを呼び寄せる脳波を送ったが、手応えは無かった。
マーグは父イデアの記憶を元に、ガイヤーの設計図を描き始めた。そしてまた、イデアの記憶を元に、名も無い大型ロボットを改造した設計図も描いた。それはイデア自身が作りたかった本当のゴッドマーズとも言える、試行錯誤の末に洗練された機体であった。マーグが描いたガイヤーは、同じ設計図から作られたウラエウスと同じ外見であった。
17
機動要塞の近くに、ギシン星の可変型宇宙船のゾンデがワープ・アウトして、機動要塞に収容された。ギシン星からは、小型の機体はワープ・カタパルトで目的地に送られるが、ゾンデは単体でワープが出来る、最小の機体であった。ゾンデには技師が乗っていた。
マーグは技師に設計図を見せた。すると技師は驚いて言った。
「なぜこんな古い部品を使うんですか。このロボットは搭乗者の超能力と脳波で動かすんですが、これでは超能力を消耗してしまって、短時間しか乗れません」
マーグは技師に言った。
「そうなのか。設計図を描き直したいから、最新の技術を教えて欲しい」
そしてマーグと技師は、二人で相談をしながら設計図を描き直し始めた。そして設計図を描き終わった後、マーグは技師に、イデアについて訊いた。
「元科学長官のイデア様は素晴らしい人でした。しかし17年前にご乱心なされて、全ての資料を燃やして自らの命をお断ちになられました」
「そうか。それは残念だったな。 ・・・それではイデアの自宅には、二体のロボットが置かれていなかったか」
「いや、イデア様の屋敷にはロボットはありませんでした」
それを聞いて、マーグは思った。
〈父イデアは技術が悪用される事を防ぐためにそんな事をしたのであろう〉
技師はゾンデに乗ると、ギシン星へと帰って行った。
〈グルとゲルが乗ってたグルダーは、父が作ったオイディプースを最新の技術で改良した機体のようだったが、それ以外には、父の影響を受けているロボットは見た事が無い〉
マーグはそう思って、謎の安堵をした。
解説
当時売ってた徳間書店の、ロマンアルバムエクセレントでは、3話に出るグルダーの日本名がナベシーマで、12話のゾンデは別名がナーベシマIIで、49話に出たダルマックが、ファイナルナベシーマIIIと書いてあります。
18
マーグは自分の乗機として、ガイヤーXVII(エクセレント・バイスジェレント2号機)を完成させた。皇帝ズールに対して反逆したイデアとの関連を疑われないように、ウラエウスではなくガイヤーという名前にした。そのガイヤーXVIIと合体するロボットとして、五体のマジンを完成させた。それらはマジン・キュイラスであり、マジン・ブレイサーRとマジン・フレイサーLであり、マジン・グリーブRとマジン・グリーブLであった。
マジン・キュイラスは骨盤が四角い枠のような形であり、胸骨が下に伸びて骨盤の前方と繋がっていた。第一頭蓋骨は平たくて、合体時は顎の下を基点として跳ね上がって、胸骨の表面を滑り降りて胸の中に収納されて、第二頭蓋骨は頸椎の付け根が背骨の裏を滑り上がる。
肋骨の斜め後ろと骨盤の斜め後ろは切れるようになっていて、合体時は鎖骨が、一番上の肋骨の胸側を基点として跳ね上がって、同時に腿の背面の蓋も開いて、体内にガイヤーXVIIを収納して再び閉じる。この時ガイヤーXVIIの脇立ては根元で折れ曲がって、頭部の横幅を小さくする。
上腕骨が橈骨と尺骨の間に収納されて腕が縮んで、肩当てが下に90度回転する。
そして爪先が下を向く。
19
合体する時に腕になるロボットは、マジン・ブレイサーRとマジン・ブレイサーLであった。
腕になった時の、拳部分が右手か左手かで見分ける事は出来るが、人型の時は全く同じ形であった。
「マーグ隊長は優れた超能力者なので見分けられるでしょうけど、目で見た物しか見えない者もいます。彼らを混乱させないために、見分けられるようにして下さい」
モニターに映し出されている設計図を見て、ロゼが言った。
そこでマーグは、ブレイサーRの頭部は白、ブレイサーLの頭部は緑にした。
胸パーツはほぼ円筒に近い形で、上腕部も前腕部もカーブしていたが、合体時は、上腕骨が橈骨と尺骨の間に入って腕が縮み、肩甲骨が上に90度回転して、両腕が繋がって180度の扇形になって、円盤型の頭部は、その扇形の内側と繋がる。
大腿骨が脛骨と腓骨の間に入って、同時に横棒一本だけで出来ている腰帯が縮んで、腰と左右の脛が合体して前腕部になる。同時に、左右の脛の中に収納されてた、分割された拳が腓骨の表面を滑って飛び出して合体して、手になる。そして左右の爪先が合体して下に倒れて、手の甲当てになる。
樋のような形の甲羅が90度前に倒れて肩当てになり、現れた背中から枘が生える。
20
合体する時に膝から先になるマジン・グリーブRとマジン・グリーブLは、脛の飾りが右側にだけあったらRで、左側にだけあったらLであったが、見てもすぐには分からないので、グリーブRの頭部は黒、グリーブLの頭部は黄色で目は青にした。グリーブL以外のロボットは全て目が黄色であった。
合体時は上腕骨が橈骨と尺骨の間に入って腕が縮んで、一本の棒だけの肩帯が縮んで腕が両脇腹の溝に嵌る。
大腿骨は脛骨と腓骨の間に入って脚が縮んで、一本の棒だけの腰帯が縮んで、腰と左右の脛がくっつく。
21
バトル・キャンプにて、マーグから、本日の午後5時、富士山麓にて待つという電文が入った。それからインター・ホーンを通じてミカが管制室から連絡して来た。
「未確認飛行物体が地球へ接近中です!」
「どうやら本当に来たようだな」
ケンジは相手の出方を見るために、クラッシャー隊を出撃させる事にした。それにしてもタケルには、マーグが戦いに来るという事がどうしても信じられなかった。
ギシン星の機動要塞は雲間から現れ、ぐんぐん降下して着陸した。
「隊長、来たようです」
「フフフ、出迎えてやるか――――」
マーグはロゼを従えて、コスモ・クラッシャーの一号機、二号機が来るのを待った。クラッシャーの隊員達は、コスモ・クラッシャーから降りて出て来た。
「隊長、あれは間違い無くマーグだわ」
「長官へ報告しろ!」
「はい!」
ミカはコスモ・クラッシャーの二号機へ戻って行った。
クラッシャーの隊員達を見つめていたマーグの表情が険しくなった。
「マーズ。――――地球名、明神タケルがいないな。俺が呼んだのは、マーズだぞ!」
ケンジはマーグの様子を探っていた。
「どうしたと聞いている! 答えろ! さもないと――――!」
たちまちクラッシャー隊員達の周囲には超能力者達が現れ、じりじりと迫って来た。危機を感じたクラッシャー隊員は、銃を抜いて戦う構えになった。しかし超能力者達の動きは素早く、次々とクラッシャー隊員達に襲い掛かった。
「マーズめ、まだ出て来ないつもりか!」
苛立つマーグへ、ロゼは落ち着き払って言った。
「いや、もう近くまで来ています」
そしてタケルが乗っているコスモ・クラッシャー三号機が向かって来た。
〈マーグだったらクラッシャーのメンバーを知っている。それなのに何故攻撃するのか!〉
急降下して来た三号機は超能力者達を攻撃して倒し、その勢いに乗るように荒々しくマーグとロゼの目の前へ着陸して来た。
22
コスモ・クラッシャー三号機が、並んで立っていたマーグとロゼの目の前に突っ込んで来て止まり、タケルがコクピットから飛び降りた。タケルとマーグは久しぶりに対面した。
「マーズ、待ったぞ!」
目の前のマーグから甘さが消え、妙に刺々しい。
「どうしたっていうんだ。俺の兄はそんな男じゃなかった。平和を愛する男だった。こんな血を流す事などしなかった」
「弟であってもズール皇帝に歯向かう者は敵だ!」
タケルはマーグの反応に戸惑い、混乱したが、彼が着けている髪飾りに気が付いた。
「問答無用だ! 行くぞ、マーズ!」
マーグは戦闘ポーズになって叫んだ。
「みんな、コスモ・クラッシャーへ戻ってくれ!」
タケルが背後の仲間達に声をかけると、その隙を見てマーグが挑戦して来た。マーグが衝撃波を撃って、タケルがそれを避けてジャンプすると、マーグもジャンプして衝撃波をもう一度撃った。タケルは衝撃波でバリヤーを作って防御し、空中でぶつかり合って着地した。その瞬間、タケルはマーグの髪飾りから不快な波動が出ている事に気付いた。二人はまるで百年も前からの仇のように激しく挑み合った。いや、必死でそれを避けようとしているのはタケルの方だ。しかしマーグは必殺の構えで挑んで来た。二人は兄弟であって兄弟ではない、ズールの仕組んだ冷酷な運命に弄ばれるように戦い続けていた。タケルはマーグの攻撃を避けながら、時々マーグの頭を狙って衝撃波を発射して、髪飾りを壊そうとしたが、マーグはそれを避けながら必殺の攻撃を仕掛けて来ていた。流石にタケルは疲れが出始めている。次第にマーグの勢いに押されて行った。
23
マーグは手加減無しで攻撃している一方で、タケルは防戦に必死であった。
「ガイヤー!」
叫び声を上げた瞬間、既にタケルはマーグの衝撃波を受けて倒れていた。しかし明神礁では、石像が崩れて、中からガイヤーが現れて飛び立っていた。
「どうだ、マーズ、ギシン星へ帰るか、それともここで死ぬか!?」
「俺の心は地球人だ!」
「ええい、まだそのような戯言を!」
「俺は死ねん! 地球のために死ぬ訳にはいかないのだ! 俺が死んだら地球も死ぬのだ!」
「だからお前を殺すのだ!」
「俺は死なん! 貴様達に地球を愛する俺の心までは殺す事は出来ん!」
タケルはぼろぼろになりながらマーグの攻撃を躱していた。
「貴様のような奴はズール皇帝の名の下に!」
止めの一撃を加えようとした時であった。飛来したガイヤーは一瞬の内にタケルを収容した。
「ええい、俺のガイヤーも来い!」
マーグが命令する声と共に移動要塞から、ガイヤーXVII(エクセレント・バイスジェレント2号機)が現れて、マーグとロゼを収容した。マーグのガイヤーはタケルのガイヤーを捕まえると地上へ叩き付けた。更にもう一度捕まえて、前以上に激しく叩き付ける。もうタケルには耐え切れる自信が無くなっていた。
「ゴッドマーズ!」
必死の思いで叫びながら、ガイヤー共々マーグのガイヤーに振り回されるがままになっているのだ。
五神ロボがやって来た。
「来たな! こっも六神合体だ!」
マーグの命令で、機動要塞から五体のロボットが飛び出した。
24
「六神合体!」
タケルとマーグは同時に叫んだ。
スフィンクスの頭部は後頭部を軸にして捲れ上がり、背中のカバーが開いて、頭部が下にスライドして背中の中に引き込まれて収納され、背中のカバーが閉じた。
そして胸のカバーが開いてゴッドマーズの頭部が、下に折れ曲がった首を真っ直ぐに伸ばして起き上がり、胸のカバーが閉じた。
そして胴体前面全体と、オート・ジョイントで繋がっている腿の前面の装甲板が、肩を軸にして跳ね上がり、胴体内でガイヤーの磔台が下にスライドして、ガイヤーが胴体内に収納されると、磔台が左右の突起でガイヤーの胴体を挟み、下の方に伸びた棒の先端の板がガイヤーの足を固定した。
同時にスフィンクスの肘が90度曲がって前腕部を前に向けると、肩が上にスライドしながら下に90度回転して、脇腹のブロックを外側に巣制度させて胴体内に隙間を作り、、肩と上腕部の関節を90度回転して前腕部をその隙間の中に収納し、脇腹のブロックはゴッドマーズの肩の底面と一体化して固定して支えて、胴体前面の装甲が閉じた。
そして足は爪先と踵の間の、中足の部分が中に引き込まれて、凱旋門のような形になった。
こうして王の墓を守る番人の名を持つスフィンクスが、ガイヤーを守る鎧となった。
ウラヌスとタイタンは、胸パーツが前後に厚みを増して、頭部は背中と共に後ろに行き、ウラヌスの右腕とタイタンの左腕は中央に残り、ウラヌスの左腕とタイタンの右腕は胸と共に前に行くと、前腕部が上腕部を中に引き込んで両腕が短くなり、頭部と両腕が胸パーツの中に引き込まれて収納されると同時に、ゴッドマーズの肩に刺さる枘が、ウラヌスの左側面中央と、タイタンの右側面中央から生えた。
腿が大腿部の中に引き込まれて脚が短くなり、腰幅が狭くなって左右の脛が合体して、
爪先を下に向けて、踵と足全体が脛の中に引き込まれた。
こうして妻子に暴力を振るった夫の名を持つウラヌスと、巨人の名を持つタイタンが、強い力で戦う腕となった。
シンとラーは、上腕部が前腕部の中に引き込まれて腕が縮み、腿が脛の中に引き込まれて脚が縮み、胸が前に飛び出して、背中が後ろに飛び出して、頭部が胴体内に引き込まれて、脇腹に出来た隙間の中に両腕が引っ込んで収まり、脚をぴったりと揃えて閉じた。
こうして、メソポタミアの月神の名を持つシンと、エジプトの太陽神の名を持つラーが、高き処に立つ脚となった。
ウラヌスとタイタンの枘が、ゴッドマーズの肩の枘穴に刺さり、
シンとラーは、両肩と頭で出来た壁と胸の殻の間の穴にスフィンクスの爪先がささり、両肩と頭で出来た壁と背中の殻の間の穴に、スフィンクスの踵が刺さった。
ガイヤーの磔台は、スフィンクスの背骨の内側をスライドして上に上がり、ガイヤーの顔がゴッドマーズの口の中に現れた。
そしてガイヤーのコクピット・ブロックは、故障しているのか、胸の位置に留まっていたが、合体と同時に回路が開くのか、ガイヤーの背骨と頸椎と後頭部の骨の裏側に張られたロープを伝って登って、ガイヤーの頭の中に来た。
タイタンとウラヌスは、足が無くなった脛の底面から、親指と人差し指を持つ二分割された手の平と、中指と薬指と小指を持つ二分割された手の平が飛び出して合体して、手を形成した。
合体が完了すると、スフィンクスの腹部のバックルが赤一色から、黒地に、黄と赤のGとMの字が書かれた、ゴッドマーズのエンブレムになった。
25
同時にマーグのガイヤーも他の五体のロボット達と合体していた。
マジン・キュイラスの頭部は、顎を蝶番の軸のようにして起き上がると、胸の中に引き込まれた。そしてゴッドマーズOVA(オリジナル・ベリティ・アドベント)の頭部が迫り出して来た。
胴体背面全体の装甲が、胸の上端、人間の鎖骨のような位置を軸にして跳ね上がり、同時に腿の背面の装甲も開いて、ガイヤーXVIIの頭部の脇立てが付け根から倒れて側頭部に密着して、マジン・キュイラスの中に収容されて、中で磔台のような物に固定されると、胴体の背面と腿の背面の蓋が元通りに閉じた。
そして上腕部が前腕部の中に引き込まれて腕が縮んで、肩当てが下に90度回転して、腕を中に隠した。
マジン・ブレイサーRとマジン・ブレイサーLは、前腕部も上腕部も湾曲していて、上腕部が前腕部の中に引き込まれて腕が短くなって、扇形になると、肩の付け根が上方に90度回転して、両腕が90度の扇形になって、円盤型の頭部と共に胸パーツの上のキャップとなり、甲羅が前方に倒れてゴッドマーズの肩当てとなり、剝き出しになった背中から、ゴッドマーズの肩に刺さる枘が生えた。
脛が腿を中に引き込んで、腰パーツに隙間なく密着し、左右の脛同士もぴったりとくっついて、足は下を向いてゴッドマーズの手の甲当てになった。
マジン・グリーブRとマジン・グリーブLは、上腕部が前腕部の中に引き込まれて、前腕部と肩が繋がると、両脇腹の溝の中に引っ込んだ。
腿が脛の中に引き込まれて、左右の脛と腰がくっついた。
そしてマジン・キュイラスの足の裏の窪みの中に頭部が嵌り、マジン・キュイラスの爪先が下に倒れて、マジン・グリーブRとLの胸をがっちりと噛んで固定した。
マジン・ブレイサーRとLから変形した腕は、枘がゴッドマーズの肩の枘穴に刺さると、足の裏だった部分から、親指と人差し指が付いた半分の手の平と、中指と薬指と小指が付いた半分の手の平が飛び出して合体して、手になった。
こうしてゴッドマーズOVA(オリジナル・ベリティ・アドベント)が完成した。それはイデアがかつて作って封印した、名も無い巨大ロボットに瓜二つであった。
26
合体が完了して正面を向いたタケルは、マーグの機体を見ると驚いて言った。
「ゴッドマーズなのか!?」
「そうだ! 貴様が乗ってるような急ごしらえではなく、父イデアが本当に作りたかったゴッドマーズだ!」
マーグが勝ち誇ったように言った。
「ゴッド・ファイヤー!」
と、タケルは光るGマークを放った。しかしそれはマーグのゴッドマーズに到達しただけで消滅して行ってしまうのだ。
「あ、ゴッド・ファイヤーが効かない!」
焦る様子がマーグにはよく分かった。マーグのゴッドマーズは勢いに乗ってタケルのゴッドマーズを殴り始めた。
「く、くそーっ!」
「フフフ、旧式の超能力増幅器では負担が大きい。いつまで持ち堪える事が出来る!」
タケルは初めて敗北を感じ始めていた。しかしその絶望的なタケルの耳元で励ます声がある。
〈タケル。お前は地球と宇宙を結ぶ絆だ! 生きろ! 生き抜くんだ!〉
それはタケルを育てた明神博士の声だった。タケルの衰え始めた気力に最後の活力が生まれて来る。
「マーズ・フラッシュ!」
腹部のバックルのMの字から光る粒子が噴き出して、空中に剣を形作り、ゴッドマーズの手がその柄を掴んだ。そしてマーグのゴッドマーズの肩口に振り下ろしたが、そこまでが限界だった。ゴッドマーズの動きが止まった。マーグ機の手が剣の刃をどけると、マーグは勝ち誇って叫んだ。
「見たぞ! ゴッドマーズの弱点!」
マーグのゴッドマーズは撤退して機動要塞に帰還し、機動要塞は飛び去った。
そして動きを止めたゴッドマーズの両腕が、付け根から外れて落ちた。コクピットのタケルはもはや気絶に近い状態で苦しんでいた。
解説
六神合体ゴッドマーズは、ぼくが小学4年から5年の時に放送されてましたけど、超合金もプラモデルもガシャポンも、アニメとはデザインも動き方も違っていたので勝手にデザインし直して設計図を描きました。
スフィンクスの肩にゴッドマーズの肩と同じ模様を付けて、合体時に90度回転するようにして、
ウラヌスとタイタンの脚は、脛と足が一体化していて爪先が無い、ただの四角柱にするなど、妥協をしました。
高校2年の時にビデオが売り出されましたけど、ガイヤーもゴッドマーズもデザインが変わっていて、合体シーンが無かったので、勝手に膝から下を切り離して、ゴールドライタンに出るタイムライタンから頭部の蓋を外したのと同じ変形をさせる絵を描きました。
ゴッドマーズとは無関係ですが、高校時代はガンダムのパクリみたいな漫画を描いていて、学校で生物学を習っていましたから、ロボットの整備シーンや撃墜シーンで、ムーバブル・フレームを、骨みたいな形に描いてました。
超合金魂が売り出された時に、テレビ版の方のゴッドマーズの設計図を、ウラヌスとタイタンの足が合体時に脛の中に引っ込むようにして、描き直しました。
現在、リサイクル店で働いてますけど、2022年の春頃、スーパーロボット大戦Dというゲームの攻略本が会社に来ました。そのゲームの中では、マーグがビデオ版のゴッドマーズに乗って、タケルが乗ってるテレビ版のゴッドマーズと共闘しますので、ビデオ版ゴッドマーズの合体シーンを考えました。
脚ロボットの変形は、高校の時に既に考えてましたけど(単なるタイムライタンのパクリ)、
腕ロボットの下半身は、タイムライタンの両脛に、分割された手を入れて、手の甲当てが起き上がって爪先になるようにして、上半身はブライガーみたいに胸パーツの上で腕を折り畳んで、背中に貼り付いてるパーツが胸パーツの上に来るようにして、
胴体ロボットは、スフィンクスを前後逆にして、ゴッドマーズの肩が起き上がって胴体ロボットの肩当てになって、中から腕が出るようにしました。
イデアが五神ロボを合体するように改造する場面は、書くのが凄く難しかったんですけど、ガンダムもどきの漫画を描いてた時の経験から、ムーバブル・フレームを組み込んだら、最小限の改造だけで合体可能に出来るようになりました。
そして2022年の夏の終わり頃に、この全26話の二次創作を書き始めました。
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